こんにちは。練馬区大泉学園で会計事務所を運営している、税理士の上原啓輔です。
本日は、掲題の「消費者向け電気通信利用役務の提供と『少額特例』の関係」を書きます。
税務や経理関連の仕事をしていない限りは、まず気にしないような論点ですが、意外と盲点だと思うので記載します。
質問
当社は日本に本社のある内国法人です。
当期、海外の企業からインターネットを通じてソフトウェアサービスの提供を受けています。
1回の支払は5,000円です。インボイスの受領はありません。
当社はいわゆる消費税の「少額特例」を受けることのできる事業者です。
当該ソフトウェアサービスの支払は、「少額特例」の適用があり、仕入税額控除が出来るのでしょうか?
回答
当該ソフトウェアサービスの支払は、「少額特例」の適用があり、仕入税額控除を受けることが出来ます。
解説
「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは?
「電気通信利用役務の提供」とは、インターネットを通じたクラウドサービスやデジタル知財の提供の事です。
「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは、その性質から広く消費者が利用するようなサービスです(消基通5-8-4(注))。
具体的には、誰でも利用できるようなオンライン英会話、オンラインゲーム、電子書籍の購入、クラウドのデータ保存などが該当します。
「事業者向け電気通信利用役務の提供」というものもありますが、これはその性質から事業者のみが対象になるサービスのことです(消法2①八の四、消基通5-8-4)。
「電気通信利用役務の提供」の内外判定は?
「電気通信利用役務の提供」の内外判定は、「電気通信利用役務の提供を受ける者の住所等」となります(消法4③三)。
「役務提供者の事務所等の所在地」ではないことに留意が必要です。
「少額特例」とは?
少額特例とは、インボイス制度を機に導入された特例です。
小規模事業者の事務負担に配慮した制度で、1万円未満(税込み)の支払については、インボイスの保存がなくても、仕入税額控除が出来るというものです。
納税者に有利な規定となります。
ただし適用できるケースは限定されており、以下の要件になります(平成28年改正消法附則53の2、平成30年改正消令附則24の2)。
- 期間:令和5年10月1日~令和11年9月30日(6年間)
- 対象金額:1万円未満(税込み)
- 事業者:基準期間の課税売上高が1億円以下か、特定期間の課税売上高が5,000万円以下のどちらかに該当する事業者
事例への当てはめ
ご質問の事例は「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当します。
従って、国内取引となりますので、当該ソフトウェアの購入は「国内で行う課税仕入れ」に該当します。
さらに支払が5,000円のため、1万円未満(税込み)に該当するため、「少額特例」が使えます。
なお、経過措置である「インボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る80%・50%控除」は「少額特例」には適用されません(平成28年改正消法附則53の2)。
「少額特例」は「80%・50%控除」に優先して適用されます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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