こんにちは。東京都練馬区大泉学園で会計事務所を運営している、税理士の上原啓輔です。
本日は、「非居住者に支払う、原稿料やデザイン料の源泉徴収」について記載をします。
質問
当社はマーケティングを行う日本法人です。
この度、アメリカ人の非居住者に、原稿料とデザイン料を支払います。
この場合は、源泉徴収は必要でしょうか?
回答
支払日の前日までに、日本の税務署に「租税条約に関する届出書」及び「特典条項に関する付表」を提出することで、源泉徴収は不要となります。
解説
所得税法の取り扱い
クロスボーダー取引を検討する場合、まず①国内法の取り扱いを確定させ、②その後、租税条約を確認し限度税率を確認します。
そこで、まずは国内法の取り扱いを確定させます。
非居住者に関する課税方法は、所得税法に定めがあります。
非居住者に対する原稿料やデザイン料は、契約内容にもよりますが、上記表の⑩「(著作物の)使用料等」に該当する場合が多いと考えます(所法161①十一、所基通161-35)。
その場合は、国内源泉所得として支払い時に20.42%の源泉徴収が必要となります。
著作物に該当するかどうか?
ご質問の原稿料やデザイン料については、「著作物の使用料」に該当するかどうか、がポイントとなります。
著作権法第2条第1項第1号では、「著作物」を以下のように定義しています。
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
ご質問のケースが、上記に当てはまるかどうかの検討が必要です。
原稿料については、単にアメリカの様子や経済状況などの報告をする程度のものであれば、著作権法上の著作物に当たらないと考えます。
デザイン料については、単に依頼者の指示のもと、作業のアシスタント的な作業を行う程度であれば、著作権法上の著作物に当たらないと考えます。
このような場合は、国内源泉所得に該当しないため、源泉徴収不要となり課税関係の検討は終了となります。
しかしながら、上記のような簡便的な報告書や作業ではなく、「著作物の使用料」に該当する場合は、国内源泉所得に該当し、20.42%の源泉徴収が必要です。
次に、租税条約で税率の減免がされているかどうかの確認が必要となります。
租税条約の検討
租税条約では、国内法で定める税率を軽減あるいは免税としている場合があります。
クロスボーダー取引を検討する場合は、必ず租税条約まで確認する必要があります。
日米租税条約第12条第1項で、使用料については以下のように規定されています。
一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。
読みづらいですが、ご質問のケースにあてはめると、「一方の締約国」とは日本、「他方の締約国」とはアメリカのことです。
ご質問のケースでは、「著作物の使用料」について、アメリカにおいてのみ課税権があることとなります。
よって、日本では免税とされます。
参考:日米租税条約
「租税条約に関する届出書」、「特典条項に関する付表」
租税条約の免税を受けるためには、支払日の前日までに、貴社を通じて日本の税務署に「租税条約に関する届出書」、「特典条項に関する付表」を提出する必要があります。
具体的な手続きは、こちらのブログを参照していただければと思います。
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