【所得税】印税、原稿料、作曲料などの変動所得があった場合の「平均課税」


こんにちは。東京都練馬区大泉学園で会計事務所を運営している、税理士の上原啓輔です。

日本の所得税は、所得が多いほど税率が高くなる累進課税が採用されています。

ところが、所得金額は年によって変動が大きかったり、臨時で高額の所得となることがあります。

そのような特殊事情に考慮して、変動所得や臨時所得がある時は、税負担を下げるために、低い税率で計算できる、「平均課税」という方法を選択することが出来ます。

変動所得とは、事業所得や雑所得で、以下のような所得が該当します(所法2①二十三、所令7の2)。

  1. 漁獲やのりの採取による所得、
  2. はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得
  3. 印税や原稿料、作曲料などによる所得
  4. 著作権の使用料に係る所得

臨時所得とは、事業所得や不動産所得、雑所得のうち、次の所得やこれらに類する所得をいいます(所法2①二十四、所令8)。

  1. 職業野球の選手などが、3年以上の期間特定の者と専属契約を結ぶことにより、一時に受ける契約金で、その金額がその契約による報酬の2年分以上であるものの所得
  2. 土地や家屋などの不動産、借地権や耕作権など不動産の上に存する権利、船舶、航空機、採石権、鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権などを 3 年以上の期間他人に使用させることにより、一時に受ける権利金や頭金などで、その金額がその契約による使用料の 2 年分以上であるものの所得 
     ※借地権や地役権を設定して土地を長期間使用させたり、借地権のある土地を長期間使用させることにより受 ける権利金や頭金などの所得には、臨時所得ではなく譲渡所得になるものがあります。譲渡所得になるものは、建物や構築物を所有するための借地権の設定や特定の地役権の設定などにより、一時に受ける権利金や頭金などがその土地の価額の 2 分の1を超えるなどの場合の、その権利金や頭金などです。
  3. 公共事業の施行などに伴い事業を休業や転業、廃業することにより、3 年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得
  4. 鉱害その他の災害により事業などに使用している資産について損害を受けたことにより、3 年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得

変動所得や臨時所得がある場合は「平均課税」により税金を計算することが出来ます。

ただし、以下の要件ががあります。

  1. ①前々年、前年に変動所得がなかった人
    ②前々年、前年に変動所得があっても、その合計額の2 分の1の金額が、本年の変動所得の金額に満たない人
    →(本年の変動所得の金額+本年の臨時所得の金額)が、本年の総所得金額(申告書第一表の「所得金額等」欄の合計)の20%以上であること。
  2. 前々年、前年に変動所得がある人で、(その合計額の 2 分の1の金額)≧(本年の変動所得の金額)の人
    →本年の臨時所得の金額が本年の総所得金額の20%以上であること

※総所得金額とは、源泉分離課税の対象となる所得、申告分離課税の対象となる所得、山林所得、退職所得を除いた金額の合計額です。

1.次の算式により、「調整所得金額」と「特別所得金額」を計算します。

※平均課税対象金額とは、変動所得の金額と臨時所得の金額の合計額です。

2.次に、「調整所得金額」に対する税額を計算し、「調整所得金額」に対するその税額の平均税率を算出します。

調整所得金額に対する税額 ÷ 調整所得金額 = 平均税率(小数点3位以下切捨て)

3.次に、特別所得金額に対する税額を計算します。

特別所得金額 × 平均税率

4.課税総所得金額に対する税額は、上記2+3を合計した税額となります。

前提

総所得金額 6,000,000円

所得控除額 2,000,000円

課税総所得金額 5,000,000円

変動所得の金額 4,000,000円

※前年、前々年の変動所得はないものとします。

0.平均課税の適用可否

総所得金額6,000,000円 × 20% < 変動所得の金額4,000,000円
→平均課税の適用あり。

1-1.調整所得金額
5,000,000円 ー 4,000,000円 × 4/5 = 1,800,000円

1-2.特別所得金額
5,000,000円 ー 1,800,000円 = 3,200,000円

2ー1.調整所得金額に対する税額
1,800,000円 × 速算表の税率5% = 90,000円・・・A

2-2.調整所得金額に対する平均税率
90,000 ÷ 1,800,000円 = 5%(小数点3位以下切捨て)

3.特別所得金額に対する税額
3,200,000円 × 上記の2-2の割合(5%) = 160,000円・・・B

4.総課税所得金額に対する税額(A+B)
90,000円 + 160,000円 = 250,000円

※平均課税を適用しない場合の税額

5,000,000円 × 20% ー 427,500円 = 572,500円
平均課税を適用した方が、322,500円安くなる。

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