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「試算表」をどう活用するか?【②B/S・貸借対照表編】


「毎月、税理士から試算表が送られてくるけれど、売上と利益(P/L)の数字しか見ていない」

「経理は会計事務所に丸投げ。決算の時に『今年の税金は〇〇万円です』と言われて、慌てて現金をかき集めている」

「売上は順調に伸びているはずなのに、なぜかいつも通帳の残高がギリギリで資金繰りが苦しい……」

社長ご自身が本業の営業や実務に奔走し、夜遅くに経理作業をしている場合や、逆に会計事務所へ完全に丸投げしている場合、このようなことが起こりがちです。

この記事では、難しそうと敬遠される「B/S(貸借対照表)」の読み方を、専門用語を極力省いて分かりやすく解説します。

B/Sが読めるようになれば、「なぜお金が手元に残らないのか」が分かり、資金繰りの不安が軽くなります。

試算表は大きく分けて「P/L(損益計算書)」と「B/S(貸借対照表)」の2つから成り立っています。

P/L(損益計算書)は「1ヶ月(または一定期間)の成績表」です。

いくら売上げて、いくら経費を使い、いくら利益が出たかということが分かります。

多くの経営者は、こちらを見ています。

一方で、B/S(貸借対照表)は「ある時点での会社の資産と負債の状態」を表すスナップショットです。

会社を設立した日~今日に至るまで、会社がどうやってお金を集め、それを何に変えて持っているのか、という「会社の全歴史と現在の体力」がこの表で表されています。

例えば、会計事務所に経理を丸投げしている状態は悪いことではありません。

社長の貴重な時間を本業に使うべきだからです。

しかし、「試算表から自社の現状を読み解くこと」まで放棄してしまうのは危険です。

税理士が試算表を作ってくれても、社長が「今、うちの会社はあと何か月無収入でも生き残れるか?」を知らなければ、適切な経営判断(採用、設備投資、広告費の増額など)は下せません。

B/Sを読むことは、自社の「体力」を確認する作業なのです。

B/Sの表を見ると、数字がずらっと並んでいて嫌気がさすかもしれません。

しかし、実は構造は非常にシンプルです。

表は「左側」と「右側」に分かれており、左右の合計金額は必ず一致(バランス)します。

だからBalance Sheet(バランスシート)と呼ばれます。

見るべきポイントは、大きく3つのブロックに分かれます。

  • 右側(お金をどうやって集めたか?)
    • 【負債】 銀行や取引先から「借りているお金(いつか返すお金)」
    • 【純資産】 社長自身が出した資本金や、過去から積み上げてきた「自分のお金(返さなくていいお金)」
  • 左側(集めたお金が、今どんな形になっているか?)
    • 【資産】 現金そのものや、売掛金、機械、車など「今持っている資産」

これだけです。

「右側で集めたお金が、左側の何に変わっているか」をチェックするだけだと考えれば、少し気が楽になりませんか?

左側の「資産」は、上から下に向かって「現金化しやすい順」に並んでいます。

ここでのチェックポイントは「本当にお金に換えられる財産なのか?」を見ることです。

現金・預金(最重要科目)

会社にとっての血液です。

ここを見る時は、単なる金額の大小ではなく「固定費の何ヶ月分あるか?」を計算してください。

たとえば 従業員5名の場合、毎月の人件費、家賃、社会保険料などで、最低でも月に200万〜300万円ほどの「固定でお金が出ていく状態」かと思います。

理想は「固定費の3ヶ月〜半年分」の現金が常にあることです。

もし1ヶ月分を切っているなら、すぐに銀行へ融資の相談に行くか、なんらかのコスト削減が必要です。

売掛金(うりかけきん)

「商品は納品した(売上は立った)けれど、まだ入金されていないお金」です。

P/Lだけを見ていると「今月は500万円の売上があって黒字だ!」と喜んでしまいますが、その500万円がまだ入金されていなければ、この「売掛金」に計上されます。

社長がチェックすべきは、「回収期日を過ぎているのに残っている売掛金はないか?」です。

売掛金が不自然に膨らんでいる場合、取引先の倒産リスクや、自社の請求漏れの可能性があります。

社長貸付金・仮払金(要注意科目!)

B/S科目で、銀行からの評価を下げるのが「社長貸付金(役員貸付金)」や「仮払金」です。

これは、「会社のお金と社長の個人のお金が混同されている」というサインです。

例えば、社長が個人的な飲食代や生活費を会社の口座から引き出した場合、会計上は「会社が社長にお金を貸している(資産)」として処理されます。

ここが年々増えている会社は、金融機関から「ルーズな会社」とみなされ、いざという時の融資が下りなくなります。

経理を丸投げしていると、税理士が「使い道の分からない出金」をとりあえずここに放り込んでいるケースも多いため、必ずチェックしてください。

右側の上半分は「負債」です。

言葉の響きは悪いですが、ビジネスを拡大するためには必要な「他人のお金」です。

重要なのは、その中身と支払いのタイミングです。

買掛金(かいかけきん)・未払金

売掛金の逆で、「商品は仕入れた(外注した)けれど、まだ支払っていないお金」です。

クレジットカードの未決済分もここに含まれます。

ここの数字が大きすぎる場合、数週間後〜数ヶ月後に一気に現金が流出することを意味します。

左側の「現金・預金」の額と見比べて、直近の支払いに耐えられるかを常に確認する必要があります。

借入金(短期借入金・長期借入金)

銀行や日本政策金融公庫などからの融資の残高です。

1年以内に返す分が「短期」、1年を超えて返していく分が「長期」に分類されます。

ここで、ひとつ押さえておきたい点は、「借入金の元本の返済は、P/L(損益計算書)の経費にはならない」という会計のルールです。

例えば、P/L上で100万円の「利益」が出ていても、銀行へ毎月120万円の元本返済をしていれば、現金は毎月20万円ずつ確実に減っていきます。

P/Lしか見ていない社長は「黒字なのになぜ現金が減るんだ?」と不思議に思いますが、上記のルールを知っていると腑に落ちます。

未払法人税等

決算が近くなると計上される項目です。「今年の利益に対して、これくらい税金がかかりそうだけれど、まだ払っていない額」です。

決算月から2ヶ月後に納税が来るため、経理を丸投げしている場合は、期末の数ヶ月前に税理士に「今年の納税予測額」を確認し、納税資金をプールしておく必要があります。

右側の下半分「純資産」は、負債(返す必要のあるお金)とは違い、誰にも返す必要のない「会社自身の本当の財産」です。

実は、ここも経営にとって重要なポイントです。

資本金

会社を設立した時、あるいは増資した時に、社長や株主が用意した元手です。

繰越利益剰余金(くりこしりえきじょうよきん)

漢字ばかりで難しそうですが、要するに「創業してから今日までの、すべての利益(赤字)の合計」です。

  • 毎年黒字を出してしっかり税金を払っていれば、この数字はどんどんプラスに積み上がっていきます。
  • 逆に、毎年赤字が続いていると、この数字はマイナスに膨らんでいきます。

銀行がお金を貸すかどうかを判断する際に重視するのがこの純資産(特に繰越利益剰余金)です。

もし、この「純資産の合計」がマイナスになっている場合、それは「債務超過(さいむちょうか)」と呼ばれる状態です。

会社の持っている財産(資産)をすべて売り払っても、借金(負債)を返しきれない状態を指します。

まずはこの純資産がプラスであること、そして毎年少しずつでも「繰越利益剰余金」が増えていることが重要です。

ここまでB/Sの構造を解説しましたが、実務で忙しい社長が毎月すべての項目を細かく見る必要はありません。

税理士から試算表が届いたら、以下の3点だけを、3分で良いので確認する習慣をつけてください。

  1. 現金・預金の残高チェック
    • 「今の現金・預金残高は、毎月の固定費の何か月分あるか?」
    • 先月と比べて、総額は増えたか、減ったか?
  2. 売掛金・買掛金のバランスチェック
    • 「売上に対して、売掛金(未回収のお金)が膨らみすぎていないか?」
    • 「手元の現金で、直近の買掛金や未払金は余裕で支払えるか?」
  3. 純資産(繰越利益剰余金)の推移チェック
    • 「債務超過(純資産がマイナス)になっていないか?」
    • 「創業時からの利益の蓄積は、順調に増えているか?」

これらをチェックして「おや?」と思う数字があれば、税理士に連絡をして「この売掛金が増えているのはなぜ?」「現預金の減りが早い気がするけれど、借入返済のバランスはどうなっている?」と質問してください。

P/L(損益計算書)は、会社を成長させるための「アクセル」を見るためのものです。

一方、B/S(貸借対照表)は、会社を倒産させないための「ブレーキ」や「燃料メーター」の役割を果たします。

従業員が増え、扱う金額も大きくなってきたフェーズでは、社長の直感や通帳残高だけを頼りにした経営には限界が来ます。

経理作業そのものを会計事務所に任せるのは正解ですが、「出来上がった試算表(数字)をもとに経営判断をする責任」は、社長にしかありません。

「毎月送られてくる試算表が、ただの数字の羅列にしか見えない」

「税理士が決算の時しか話をしてくれず、毎月の資金繰りの相談ができない」

もしそのようなお悩みがあれば、それは税理士との付き合い方を見直すタイミングかもしれません。

当事務所では、記帳や経理の代行をお引き受けするだけでなく、「社長が自社の数字を読み解き、経営の武器にするための伴走サポート」に最も力を入れています。

「過去の集計」ではなく「未来の資金繰り」について、オンラインやチャットツールを使って分かりやすくアドバイスいたします。

「自社のB/Sがいまどういう状態なのか、一度プロの目線で診断してほしい」という社長様は、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。

数字のモヤモヤを解消し、本業に100%集中できる環境を一緒に作っていきましょう。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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