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「試算表」をどう活用するか?【①基本編】


こんにちは。練馬区大泉学園で会計事務所を運営している、税理士の上原啓輔です。

本日は、試算表についてのブログです。

「税理士から毎月PDFで試算表が送られてくるけれど、正直どこを見ればいいのか分からない」

「社長から『今月の数字どう?』と聞かれるけれど、説明に困ってしまう」

例えば、創業から数年が経過し、従業員が5名ほどの規模になってくると、このようなお悩みを抱える企業様が非常に増えてきます。

事業規模が大きくなるにつて、売上の波や外注費の支払いなどが複雑になり、会社のお金の流れを把握しきれなくなります。

この記事では、「試算表の基本的な見方と、経営への活かし方(基本編)」を解説します。

試算表(しさんひょう)とは、日々の取引(売上や経費の支払いなど)を集計し、「その月が終わった時点で、会社にどれくらいの利益が出ていて、どれくらいの資産・負債があるのか」をまとめた一覧表です。

「試算表」は基本的には毎月作成します(それの1年分を集計したものが「決算書」のようなイメージです)。

創業したての頃は、社長自身がすべての動きを把握しているため、銀行通帳の残高を見るだけでもなんとかなったかもしれません。

しかし、従業員が5名ほどになり、毎月固定で出ていく人件費や家賃、社会保険料、さらには外注費などの動きが活発になると、「通帳の残高=会社の本当の実力」ではなくなります。

「通帳にはお金があるのに、実は赤字が続いている」あるいは「黒字なのに通帳のお金がどんどん減っている」。

こうした「感覚と現実のズレ」を可視化してくれるのが、試算表の最大の役割です。

もっとも危険なのが、「通帳にお金があるから、今月は儲かっている(経費を使っても大丈夫)」と勘違いしてしまうことです。

例えば、銀行から1,000万円の融資を受けた直後は、通帳の残高が一気に増えます。

しかし、これは「会社の利益(儲け)」ではなく、後で返さなければならない「借金」です。

試算表を見ずに通帳の残高だけで判断していると、「まだお金がある」と錯覚し、不要なシステム投資や過大な役員報酬の設定など、誤った経営判断を下してしまいます。

通常は、「売上が確定してから、実際に入金されるまでに1〜2ヶ月のタイムラグがある」というケースが頻繁に発生します。

今月、300万円のシステム納品(売上)が完了し、それにかかった外注費や人件費が200万円だったとします。

帳簿上は100万円の「利益(黒字)」が出ていることになります。

しかし、クライアントからの入金が「翌々月末」である場合、今月の通帳には1円も入ってきません。

一方で、スタッフへの給与や外注先への支払いは「今月末」にやってきます。

結果として、「試算表上は黒字なのに、手元の現金がショートしそうになる」という事態が起こります。

これを防ぐためには、売上と入金のタイミングのズレ(売掛金)を試算表で毎月チェックすることが不可欠なのです。

税理士から送られてくる試算表は、主に「損益計算書(P/L)」と「貸借対照表(B/S)」という2つの表で構成されています(これらが横に並んでいたり、縦に連なっていたりします)。

まずは、この2つの表が「何を表しているのか」という全体像を掴みましょう。

損益計算書(P/L):いくら稼いで、いくら使ったか?

損益計算書(Profit and Loss statement)は、一定期間(その月、あるいは期首からその月まで)に「会社がいくら稼いで、いくら使って、結果的にいくら儲かったのか(または損したのか)」を表す成績表です。

社長が最も気にする「売上」や「利益」、などはすべてこのP/Lに集計されます。

P/Lの構造はシンプルです。

上から順に「売上」があり、そこから様々な「費用(経費)」を引いていき、最終的に一番下に「利益」が残るという引き算の形になっています。

まずは、「売上がいくらか」「経費の合計がいくらか」「最終的な利益がプラス(黒字)かマイナス(赤字)か」の3点だけを確認できれば、基本編としては十分です。

貸借対照表(B/S):会社に何があって、誰にいくら返すのか?

貸借対照表(Balance Sheet)は、ある月末時点での「会社の財産(現金や売掛金)」と「会社の借金(買掛金や借入金)」のバランスを表すスナップショットです。

「月末時点で通帳にいくら残っているか」「まだ回収していない売上(売掛金)はいくらか」「銀行にまだ返していない借入金の残高はいくらか」といった、「今あるもの・これから支払うもの」が記録されています。

多くの中小企業ではP/L(売上と経費)ばかりが注目されがちですが、会社が倒産するのは「赤字になった時」ではなく「手元の現金(B/Sの資産)が尽きた時」です。

会社の体力を測るためには、B/Sのチェックが欠かせません。

売掛金(まだもらっていないお金)の回収もれはないか?

B/S(貸借対照表)の「売掛金(うりかけきん)」という項目を見ます。

ここは「請求書は出したけれど、まだ入金されていないお金」の合計です。

もし、この金額が毎月の平均売上と比べて異常に大きくなっている場合、「クライアントからの入金が遅れている」「請求書を出し忘れている」可能性があります。IT・Web業界などでは、納品後の検収が遅れて入金がズレ込むことがよくあります。

試算表を見ることで、「〇〇社からの入金、まだないみたいだけど大丈夫か?」とアラートを出すことができます。

個人的は、売掛金の回収漏れがないかを確認することが、一番大事だと考えています

使途不明金(仮払金・社長貸付金)が増えていないか?

同じくB/Sにある「仮払金(かりばらいきん)」や「役員貸付金」という項目をチェックします。

ここは本来、ゼロに近いのが理想です。

この数字が増えている場合、「社長が会社のクレジットカードで個人的な買い物をしている」「領収書が未提出の経費がある」という可能性があります。

税理士も、何に使ったか分からないお金は一旦ここに計上します。

役員報酬や社会保険料のズレはないか?

P/L(損益計算書)の「役員報酬」や「法定福利費(社会保険料)」の数字を見ます。

これらは毎月ほぼ同じ金額になるはずの固定費です。

もし先月と比べて金額が大きく変わっていたら、経理ソフトへの入力ミスか、税理士側の処理ミスの可能性があります。

「毎月同じ金額になるはずの項目」を定点観測するだけで、試算表の正確性はグッと高まります。

税理士から試算表が届いたら、15分だけで構いませんので「数字を見る時間」を作ってください。

  • 手元の現金残高は正しいか?
  • 大きな経費の増減はないか?
  • 売上げの回収漏れがないか?
  • 来月、再来月の売上の見込みはどうか

これをお互いにすり合わせるだけで、「社長の頭の中」と「会社の実際の数字」が一致し、資金ショートの不安から大きく解放されます。

最後に、現代のバックオフィス環境について触れておきます。

一昔前は、紙の領収書をノートにまとめ、それを税理士が手入力し、2ヶ月後にやっと試算表が届く…というスタイルが一般的でした。

しかし、現在ではマネーフォワードやfreeeといったクラウド会計ソフトの普及により、銀行口座やクレジットカードのデータが自動で連動されるようになりました。

これにより、「税理士から試算表が送られてくるのを待つ」のではなく、「自社のクラウド会計を開けば、いつでも最新の試算表(経営状況)が見られる」状態を作ることができます。

税理士の役割も、「ただ過去の数字を打ち込んで試算表を作る」ことから、「クラウド会計の導入をサポートして奥様の入力負担をゼロに近づけ、出来上がった試算表をもとに『未来の資金繰り』や『節税・投資のタイミング』を一緒に考えること」へとシフトしています。

今回は「基本編」として、試算表の役割と、P/L(損益計算書)・B/S(貸借対照表)の大きな枠組みについて解説しました。

  • 試算表は会社の健康診断であり、感覚と現実のズレをなくすもの
  • 売上と入金のズレによる「黒字倒産」を防ぐために毎月確認する
  • 奥様は「売掛金の回収漏れ」や「使途不明金」の門番になる
  • 月に1回、試算表をもとに未来のことを考える時間を作る

最初は見慣れない専門用語が多くて戸惑うかもしれませんが、見るべきポイントは限られています。

自社の数字に興味を持ち、毎月定点観測を続けることで、必ず「数字に強い経営者・経理担当者」へと成長していくことができます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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