こんにちは。練馬区大泉学園で会計事務所を運営している、税理士の上原啓輔です。
本日は本の感想です。
村上春樹さんの『夏帆 The Tale of KAHO』です。
久しぶりの新作ですね。
実はわたしは村上春樹作品のファンです。
「新刊が出たらその日のうちに買いに行く」、というほどのファンではないのですが、過去の長編小説は全部読んだと思います。
「アリクイってなんじゃい?」とか思いながら、読了しました。
目次
感想
寝る前に少しずつ読みました。
残念ながら、寝る間も惜しんで読みたくなるほどの面白さは感じなかったです。
とはいえ、同時代的に村上春樹さんの新作を読めるのは幸せだな、と思いました。
正直、本書は何の話か良く分からなかったのですが、「村上ワールド」的なものは所々に感じられました。
本書で一つ印象に残ったのは、このような一文です。
我々が人生において体験する深刻な混乱の大半は、原因と結果の間に等価性が見いだせないことによって生じるということだ
(村上春樹(2026)「夏帆 The Tale of KAHO」新潮社、P261)
個人的なことですが、去年の6月にケガをして、いまだにそのことが尾を引いています。
「今回のケガは、自業自得ではあるもの、ほんと、原因と結果の間に等価性がないな」としみじみと思います。
村上春樹さんも大病をされたそうなので、あるいはそのような病の経験から、この一文を書かれたのかもしれません。
村上春樹作品との思い出
本書とは全く関係ありませんが、わたしは村上春樹さんのファンです。
せっかくなので、村上春樹作品との思い出を書きたいと思います。
以下、長くなります。
最初に村上春樹さんの作品を読んだのは、高校生の頃だったと思います。
家にあった『スプートニクの恋人』で、なんとか読み終えたものの、「全然おもしろくないな」と思いました。
本格的に村上春樹作品にハマったのは、大学1年生のときで、19歳でした。
作品は『ノルウェイの森』で、たしか上京した時に、母親がくれたのだと記憶しています(うるおぼえですが)。
『ノルウェイの森』を読んで、世界観のクールさと、文体のおしゃれさに、完全にハマりました。
わたしも村上春樹さんと同じで早稲田大学に通っていたので、『ノルウェイの森』に出てくるキャンパスライフを、自分のキャンパスライフに重ねてました。
淡い思い出です。
好きな作品① 『ノルウェイの森』
20代、30代の頃に、一番好きだった作品
20代、30代の頃に、一番好きだった作品は、『ノルウェイの森』です。
4回くらいは読んだと思います。
とにかく世界観と文体のおしゃれさに、心酔した感じです。
世界観も文体も、つい真似したくなるカッコよさでした。
(そして真似して、失敗します。)
「突撃隊」や「永沢さん」のような個性的なキャラクターは、わたしの周りにはいませんでしたが、自分のキャンパスライフに重ねて読んだことが懐かしです。
当時は三鷹の学生寮に住んでいたので、そんな状況も主人公のワタナベ君に重ねたりして楽しんでいました。
『ノルウェイの森』を手に取ると、いまだに思い出す光景があります。
上京したばかりの頃に、吉祥寺のダイソーで買い物した帰り道のことです。
井の頭公園が帰り道にあったので、そこのベンチでボーっと夕陽を眺めていました。
19歳で上京して、井の頭公園で夕陽を眺めていた時の、なんとも心細いような、それでいて新しい生活にワクワクするような気持ちが、ふとよみがえってきます。
ちなみにわたしのキャンパスライフは、自堕落なもので、お世辞にも勤勉な学生とはいいがたかったです。
「もう少し勉強すれば良かった」という一抹の後悔のようなものも、『ノルウェイの森』とセットになっています。
小説と現実はちがう、ということを学んだ
余談みたいな話ですが、『ノルウェイの森』で野良猫に餌付けするシーンがあります。
わたしは大学2年生の後半から一人暮らしを始めたのですが、このシーンをまねて野良猫に餌付けすることにしました。
キャットフードを窓の外に置いておいたら、1匹の野良猫がエサを食べに来るようになりました。
「おー、『ノルウェイの森』と同じことしている」と、ドキドキしたものです。
野良猫はついぞ懐くことはなかったですが、一人暮らしの寂しさが若干まぎれました。
ただ問題はココからです。
その野良猫はメスだったようで、「しばらく見ないなー」と思っていたら、ある日5匹くらい子猫をつれて戻ってきました。
子猫が5匹もやってくると、結構な騒ぎです。
おまけに他の野良猫も来るようになって、エサをめぐって縄張り争いのようなことをするようになりました。
まーまーの大騒ぎになってしまい、借家だったので、結構困りました。
野良猫には悪いけど、エサをあげるのは止めました。
「こんな状況になるなら、最初から教えてくれ、『ノルウェイの森』」と思いましたが、「小説と現実は違うな」、ということをハッキリと痛感した出来事でもありました。
この出来事をきっかけに、「小説は小説、現実は現実」とはっきり線引きできるようになりました。
小説の世界にのめりこみ過ぎ無くなったので、結果的には学びの多い体験でした・・・。
好きな作品② 『風の歌を聴け』
短いけれど、カッコいい
村上春樹さんのデビュー作です。
短い小説ですが、真似したくなるシーンが多く、実にかっこいいです。
このホームページの「好きな言葉」にも、一文を引用させてもらっています。
そのくらい好きです。
5回くらいは読んだと思います。
早稲田の講義で題材となっていた
わたしが早稲田大学に通っていたときに、村上春樹作品を題材にしている講義がありました。
人気のある講義で、わたしも聴講していました。
その講義の期末試験は、「好きな作品を取り上げて、各々考察を書く」というものでした。
教授が「私の知らない考察を書いた人には優(一番いい成績)をあげる」と言っていました。
「優はさすがにもらえないだろ」と思いながら『風の歌を聴け』の考察を書いたのですが、なんと優をもらいました。
どんな考察を書いたのか覚えていないのですが、「鼠が小説を送ってくるのは、彼の存在証明のため」みたいなことを書いた記憶があります。
『風の歌を聴け』の考察を書いて「優」をもらたったのは、わが学生生活のハイライトです。
ちなみに、この「優」をきっかけに「オレ、文学の才能あるかも!」と思って、中途半端に文学の道を志さなくてよかったです。
大学生頃は何の仕事につくか考えられなく、就活すらまともに出来ませんでしたが、結果的に「税理士」という極めて現実的な仕事に就けたのは、幸運だったというほかないです。
好きな作品 『ねじまき鳥クロニクル』
大人になって再読して、好きになった作品です。
『ねじまき鳥クロニクル』は、学生の頃に読みましたが、意味が分からなかったです。
「長いし、そもそもなんで井戸に入るの?」といった感じです。
皮剝ぎのシーンだけが強烈に印象に残っていました。
再読したきっかけは、たまたま本屋で目に留まったからです。
36歳くらいの頃に運転免許の更新のため、都庁に行ったのですが、たまたま都庁の本屋で目に留まりました。
特段理由は無かったのですが、「久しぶりに、読んでみようかな」?と思い、購入しました。
そして最初の一文が、あまりにカッコよく、1巻は一気に読んでしまいました。
こんな文章です。
台所でスパゲティーをゆでているときに、電話がかかってきた。僕はFM放送のあわせてロッシーニの『泥棒かささぎ』の序曲を口笛で吹いていた。スパゲティーをゆでるにはまずうってつけの音楽だった。
(村上春樹(1997)「ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編」新潮社、P11)
個人的な感想ですが、「これぞ村上春樹」という感じです。
「普段スパゲティーなんでゆでないし、仮にゆでてもクラシックを口笛で吹かない。そもそもロッシーニの『泥棒かささぎ』って何?何この冒頭の文章、カッコよすぎ」とか思って、若干の興奮を覚えました。
『泥棒かささぎ』をYouTubeで流しながら、本書を読むと、音楽のリズム感と本書のリズム感がバッチリあっている感じがして、面白かったです。
とまー、とにかく大人になってから読んだ村上春樹作品では、『ねじまき鳥クロニクル』がダントツにに好きです。
余談ですが、「音楽にあう読書体験」というのは、学生時代に読んだ伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」以来でした。
翻訳作品も素晴らしい
村上春樹さんは海外小説の翻訳をしています。
翻訳作品も何冊か読みましたが、「村上春樹の文体で、他の作家の世界観を読むことができる」のは、なかなかに素晴らしい読書体験です。
レイモンド・カーヴァー
村上春樹さんの翻訳で一番好きなのは、レイモンド・カーヴァーの短編集です。
一般的なアメリカ人の日常を描いたような作品なのですが、妙に心に残るものが多いです。
個人的に一番印象に残っているのは『ささやかだけど役に立つこと』という短編です。
「面白い」という表現は全くふさわしくない、残酷な短編なのですが、ずっと記憶に残っています。
内容は説明が難しいので、是非読んでいただきたいです。
もう20年前ほど前に読んだ短編ですが、いまだにパン屋を見ると、ときどきこの作品を思い出します。
ちなみに、わたしが人生で一番記憶に残っている短編小説は、江國香織さんの「デューク」です。
レイモンド・チャンドラー
レイモンド・チャンドラーの翻訳作品も、とても面白いです。
とくに『ロング・グッドバイ』という小説は、最高にカッコいいです。
なにがカッコいいかというと、「主人公のフィリップ・マーロウの、どんなにひどい目にあっても友人を裏切らない、ハードボイルドさ」がとてもカッコいいです。
村上春樹さんは、『ノルウェイの森』で『グレート・ギャッツビー』という小説のことを「一ページとしてつまらないページはなかった」といっています。
わたしにとっては、『ロング・グッドバイ』が「一ページとしてつまらないページはなかった」小説になります。
長い小説ですが、3回くらいは読んだと思います。
時々パラパラとページをめくったりしますが、どのページを読んでも面白いです。
「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」というのが有名なセリフです。
大学の時に、友人と高級ホテルのバーで、『ロング・グットバイ』の真似をして、1杯1,000円くらいのギムレットを飲んだのが、いい思い出です。
他のチャンドラー作品も、面白いのでおすすめです。
まとめ
『夏帆』の感想というよりは、村上春樹作品の想いでをつらつらと書いてしまいました。
正直、大人になってからは税務の専門書とか、歴史の本とか、自己啓発本とか、ノウハウ本の類ばかり読んでいて、小説はめっきり読まなくなりました。
村上春樹さんの作品もほとんど読まなくなりましたが、新刊がでれば、読んでいます。
これからも新刊を楽しみにしたいです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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